『着眼点は良いが・・・』
セクハラ・パワハラ・モワハラ・・・様々なハラスメントが多い中、もっともポピュラーと言えるセクハラに着眼せずに、最近急増しているモラハラに着眼したのは、少し時代の先を読んだ著者の着眼といえ、評価できる。
香山氏は、今現在日本で起きている、決して小さくない問題を、タイムリーに鋭利な触覚で問題提起し、すぐ書物として出版することが出来る能力を持っており、ここは大いに評価して良いと思う。
しかし、残念ながら、「ではどうしたらいいのか」という結論が薄かった。香山氏は何が出来るのかでも良いし、政治や福祉、国民は何をすべきかでもよいが、問題提起をしたら「課題」を出さなければいけないことくらい、社会人であり学生に教える立場でもある香山氏が知らないはずはないと思う。
まさかこの本を、モラハラしている同僚や企業に読ませるわけにも行かないし、具体的に個人で出来る解決方法の結論がないため、感想が希薄で、読んだ気がしない。この本で評価できるのは、鋭利な着眼点だけである。
ただし、これを熟読して欲しいモラハラ人間は、この社会に多数いるのは事実だが(笑)。そういう人に限って自覚がないから、この本に触れようともしないだろう。その対策方法が記載されていなかったあたりが、ややもどかしく思う。
ベストセラーズ エ714円